常識が180度変わる! ピロリ菌は食道腺がんやぜんそく、アレルギーを抑える働きがあると突き止めた

———- 人間は本当に生物界の頂点か⁉ 生命誕生から40億年のあいだに出来上がった生き物の隠れたネットワークやスーパーパワーが、最先端科学で次々と解明されている!  NHKスペシャル シリーズ「超・進化論」では、5年以上の歳月をかけて植物・昆虫・微生物を取材。そこには常識を180度くつがえすような進化の原動力があった。 書籍化された『超・進化論 生命40億年 地球のルールに迫る』では、40億年前に誕生し、今も進化を続ける「微生物」の秘密を明らかにしていく。 今回は胃がんの原因として悪者扱いされていた「ピロリ菌」が、実は別のがんや病気を抑えていたと突き止めたマーティン・ブレイザーさんを取材。腸内細菌への関心を世界的に高めたアメリカの巨大プロジェクト「ヒトマイクロバイオーム計画」で主導的役割を果たした人物に、微生物とのつきあい方を聞いた。 【微生物第1回】<がんを“狙い撃ち”する微生物を複数発見! その「スーパーパワー」で腫瘍が消えるなど劇的な効果も…!! >はこちらから。 ———- 【画像】脳を操り気分や行動まで変えてしまう微生物がいた!

味方の微生物も殺す抗生物質が過剰に使われている

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 すばらしい能力を持ち、私たちと地球を支えてくれている微生物。しかしコレラペストなど、人間に危害をおよぼし、命まで脅かす微生物もいる。  人類は感染症との長い戦いの中で微生物を殺すことに力を注いできた。感染症との戦いで、これまで多くの命を救ってきたのが病原菌を殺す作用を持つ抗生物質だ。  たとえば胃の粘膜にいるピロリ菌を抗生物質で除去することで、胃がんの予防に大きな成果が上がっている。  アメリカ・ラトガース大学先端バイオテクノロジー・医学センター所長のマーティン・ブレイザーさんは長年、ピロリ菌を研究し、この菌が胃がんを引き起こす仕組みを解明した。しかしその後、ピロリ菌には胃食道逆流症や食道腺がん、アレルギー、喘息などを抑える働きがあることを突き止めた。  抗生物質の投与を慎重に行うべきケースもあるという。  問題は、抗生物質はわれわれが思うほどよいものなのかということです。気づいていなかったリスクはないのか。医学界では、抗生物質を使いすぎているということが広く知られてきています。アメリカでは、抗生物質投与の3分の1は不要であると推定されているのです。古代からともに生きてきた微生物をわれわれは安易に殺してしまっている。われわれを助けてくれる微生物たちに親切にならなければならないのです」(ブレイザーさん)

常識が180度変わる! ピロリ菌は食道腺がんやぜんそく、アレルギーを抑える働きがあると突き止めた

4/13(木) 7:03配信90

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現代ビジネス

宇宙進出でも微生物はかけがえのない存在に

微生物がわずか3日で作ったタンパク質が、ハンバーガーのパテやチーズに変身。宇宙に進出する際にも、食料をはじめ薬や建材などを現場で作るための研究が進められている。(c)NHK

 植物や動物の陸上進出を助けたように、私たち人類の本格的な宇宙進出でも微生物が重要な役割を果たすかもしれない。  宇宙での食事に応用することをめざして開発されている、微生物がわずか3日で作ったタンパク質は、肉やチーズにそっくりの食感や栄養を再現できるという。  微生物で建築材料を作る試みもある。微生物が作った菌糸と木くずを集めて作ったブロックを加熱することで、軽いのにコンクリートよりも堅く、断熱性も高い材料を生み出すための研究開発が続いている。休眠状態の微生物と、建築の骨組みだけ地球から月や火星に運び、現地で微生物に水を与えて復活させ、壁面や家具用の材料を作ってもらおうというアイデアだ。  研究をリードするアメリカ・NASAエイムズ研究センターのリン・ロスチャイルドさんが語る。  「私たちが宇宙へ行くとき、微生物は私たちのパートナーであると考えなければなりません。健康、食料、薬など、微生物がもたらしてくれるものを利用することで人類は地球外に存在できるようになると思います。今はその始まりの段階なのです」  この地球でともに暮らす、多様な生き物たち。それぞれが進化の果てにかけがえのない能力を身につけた。しかし、その力は決して独自に獲得したものではない。時に競い合い、時に助け合いながら、種を超えて深くつながり合うことこそが、進化の大きな原動力だったのだ。  生物の多様性。その本当の尊さに、私たちは気づいているだろうか。